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Snickers: エネルギー満点のスナック

Snickers ブランド分析

1. ブランド概要

Snickers(スニッカーズ)は、アメリカの大手菓子メーカーMars社によって1930年に発売されたチョコレートバーで、キャラメル、ヌガー、ピーナッツ、ミルクチョコレートの層からなるエネルギー満点のスナックである。「お腹が空いたら、スニッカーズ(You're not you when you're hungry)」というキャッチコピーで、空腹時の救世主として世界中に親しまれている。

現在では100か国以上で展開され、年間販売本数は20億本を超える。Snickersは、単なるスイーツではなく“エネルギーのスイッチ”としてのポジションを確立している。

主な情報

  • 発売年:1930年(アメリカ)
  • 製造元:Mars, Incorporated
  • 主な成分:ヌガー、キャラメル、ピーナッツ、ミルクチョコレート
  • キャッチコピー:"You're not you when you're hungry(お腹が空くと君じゃない)"

2. ブランドの歴史と進化

Snickersの誕生は、創業者フランク・マースが家族の愛馬の名前を商品名にしたことに由来する。発売当初から「しっかり食べごたえがあるバー」として差別化され、戦時中には兵士の携帯食、スポーツ選手の栄養源として活躍。

  • 1930年アメリカで販売開始。競合よりも“満腹感”を重視した構成で人気を博す。
  • 1970〜1980年代:テレビ広告によりブランド認知が世界へ拡大。
  • 2000年代以降:サッカー、NFL、eスポーツなど若年層のライフスタイルと密接に連携。
  • 2010年以降:「You're not you when you're hungry」シリーズが世界的なマーケティング成功事例に。

Snickersは、ただ甘いだけでなく、「空腹での苛立ちを防ぐ」「集中力を取り戻す」など、機能性とストーリーテリングの両立に成功したブランドである。


3. ブランドの特徴とアイデンティティ

Snickersは“エネルギーチャージ”と“満足感”の象徴であり、ユニークなキャラクター性とユーモアを交えてその価値を発信している。

Snickersブランドの核心要素

  1. 「空腹=人格が変わる」という共感型メッセージ

    • 「お腹が空くとイライラする」「判断力が落ちる」など日常のリアルな感情をユーモラスに表現。
    • 「満たされたら元の自分に戻れる」という、感情と食を結びつけるコンセプトが浸透。
  2. 強烈な食感と構成の記憶性

    • ピーナッツのザクザク感、キャラメルのねっとり感、ヌガーの柔らかさのバランスが“記憶に残る味”を形成。
  3. スポーツとエナジーの結びつき

    • アスリートのパフォーマンス維持や、ゲーム中の集中力維持など、エネルギー摂取のタイミングと強く連動。
  4. グローバルとローカルのバランス

    • 世界共通の価値観「空腹時の自己喪失」に加え、各国でローカルな“怒りエピソード”や“あるあるネタ”で共感を生む広告を展開。

Snickersは「食べる=元気を取り戻す」という文脈の中で、人間らしい弱さと食欲を結びつけた稀有なブランドであり、これからも“感情の起爆剤”としての役割を担い続けるだろう。


4. Snickersのマーケティング戦略

Snickers(スニッカーズ)は、「空腹を満たすだけでなく、自己の感情やパフォーマンスも取り戻すチョコレートバー」として、世界中のユーザーに愛されている。そのマーケティングは“共感”“ユーモア”“日常との接続”を軸に構成されており、ブランドの魅力を生活者の感情に密着させて展開している。

Snickersのマーケティングの特徴

  1. ブランドストーリーテリング

    • 「空腹でイライラしている人がSnickersを食べて元の自分に戻る」という定番ストーリーは、広告としてだけでなく、“人間らしさを肯定する物語”として機能している。
    • 例として、アメリカ版CMでは怒りっぽくなった青年が突然ベテラン女優に変身してしまい、Snickersを一口食べると元に戻る、というユーモラスな演出がバイラルヒットを生んだ。
    • 日本でも「お腹が空くとキレやすい」「仕事中に集中できない」など、“あるある”ネタをストーリー化して商品への共感を高めている。
  2. スポーツとの連携によるエナジーブランド強化

    • サッカー、アメリカンフットボール、eスポーツなど、集中力・持久力が問われる場面での消費タイミングを意識したスポンサリングを展開。
    • 「パフォーマンスを保ちたいなら、Snickers」が定着しており、若年層の支持を広げている。
  3. パッケージによる感情訴求型マーケティング

    • 名前の代わりに「怒りん坊」「ぼーっとさん」「いらいら君」などの“感情ワード”を記載した限定パッケージを販売。
    • 自分や友達の気分に合わせて“選ぶ”“渡す”楽しさを加え、ソーシャルギフト的な文脈でも話題に。
  4. SNS連動型の共感・投稿型キャンペーン

    • TikTokInstagramでは「#スニッカーズが必要な瞬間」など、ユーザーが“空腹でミスした体験”を投稿する企画を実施。
    • インフルエンサーだけでなく一般ユーザーが主役になるUGC(User Generated Content)戦略で、ブランドのリアリティと拡散力を強化。

5. Snickersのブランド戦略

Snickersは、“単なるチョコバー”ではなく「感情を整えるスイッチ」「集中を取り戻すきっかけ」としての役割を果たすブランドへと進化している。

主なブランド戦略

  1. “感情と食”をつなげる文脈マーケティング

    • 空腹がもたらす“心理の乱れ”に着目し、Snickersがその解決策となるという日常性に訴求。
  2. エンタメ性と記憶性を両立したストーリー展開

    • コミカルかつ感情に寄り添った広告ストーリーにより、“CM=楽しみ”としてブランド自体の認知を促進。
  3. 多チャネル展開による高い接触頻度

    • テレビCM、交通広告、コンビニの棚、SNSなど、あらゆるタッチポイントで“空腹とSnickers”を紐付ける。
  4. グローバル共通テーマ+ローカル共感の二軸戦略

    • 世界共通の「You're not you when you're hungry」を軸に、各国の“怒りあるある”や“文化的なジョーク”にカスタマイズして展開。

6. 結論

Snickersは、“空腹=人格変化”というユーモラスで共感性の高いコンセプトを武器に、世界中の消費者と“感情”でつながるブランドとして確立している。そのマーケティングブランディングは、日常に笑いと安心感をもたらす存在であり、今後も人々の“感情の隙間”を埋めるパートナーとして進化していくだろう。