1. 企業概要
- 社名: 株式会社NTTデータグループ(NTT DATA Group Corporation)
- 設立年: 1988年(NTTより分社)
- 本社所在地: 東京都江東区豊洲3-3-3 豊洲センタービル
- 業界: ITサービス、システムインテグレーション
- 主要サービス: システム開発、ITアウトソーシング、クラウドサービス、データ分析、コンサルティング
- グローバル展開: 約190の都市・地域(50カ国以上)に展開
- 上場: 東京証券取引所 プライム市場(証券コード: 9613)
2. ミッション & ビジョン
- ミッション: "情報技術で未来を創る。信頼される社会のインフラを築く。"
- ビジョン: 世界中の顧客と社会に対して価値ある変革を提供するグローバルITパートナーを目指す
- コアバリュー: 顧客志向、革新性、グローバルマインド、公正性、持続可能性
3. 会社沿革
- 1988年: 日本電信電話株式会社(NTT)からシステム部門を分社化しNTTデータとして設立
- 2002年以降: 欧米・アジア・中南米などへ積極的に買収・提携展開
- 2016年: Dell Servicesを買収し、米国市場での存在感を拡大
- 2022年: NTTデータグループ株式会社に社名変更、持株会社体制を導入
- 2023年: NTTグループ再編に伴い海外事業との統合が進む
4. 経営陣および従業員情報
- 代表取締役社長: 本間 洋(ほんま・ひろし)
- 従業員数: 約190,000人(グループ全体、2023年時点)
- 主な拠点: 日本、米国、ドイツ、インド、イタリア、中国など
5. ビジネスセグメント
- 公共・金融・法人向けITソリューション: 行政、銀行、保険、製造、流通など幅広い業種向けにシステム提供
- クラウド・AI・データ分析: Microsoft Azure、AWS、Google Cloudとの連携による統合ソリューション
- グローバルITサービス: 欧米・アジアでのITアウトソーシング、SAP、Salesforce導入支援など
- コンサルティングサービス: DX推進、業務改革、IT戦略立案支援
6. 競争環境分析
- 主要競合: 富士通、日立製作所、アクセンチュア、TCS、IBM
- 競争優位性:
- 国内最大級のSI実績と政府関連案件の強さ
- グローバル市場でも買収によるネットワーク拡大と現地対応力
- コンサル~運用保守まで一貫したサービス体制
- 課題:
- 欧米IT大手との価格競争と技術革新の差
- 海外人材の確保と文化的統合の難しさ
- 高度IT人材育成と社内リスキリングの必要性
7. 技術およびイノベーション戦略
- 重点技術: クラウド、AI、IoT、5G、サイバーセキュリティ
- 研究開発: 豊洲にあるNTTデータ技術開発本部を中心に先端R&Dを推進
- オープンイノベーション: スタートアップや大学との連携強化
- 自社プラットフォーム: 「Altemista」「BizXaaS」「iQuattro」などの自社開発基盤を活用
8. リスク分析
- セキュリティリスク: サイバー攻撃による情報漏洩・業務停止
- 法規制リスク: データ保護法(GDPR等)対応や海外規制への順応
- プロジェクトリスク: 大規模システム開発の遅延・品質問題
- 人材リスク: グローバルなエンジニア不足と定着率の課題
9. 昨年の実績(2023年度)
- 売上高: 4兆4,892億円(前年比 +4.8%)
- 営業利益: 3,060億円
- 純利益: 1,892億円
- 営業利益率: 6.8%
- 純利益率: 4.2%
- 主な要因:
- 海外グループの成長と為替効果による増収
- デジタルソリューション領域での大型案件の増加
- 原価上昇や人件費の影響をコスト削減でカバー
10. 主要財務指標(四半期別・2023年度)
四半期 | 売上高(億円) | 純利益(億円) | ROE | ROA | 売上成長率 | 純利益成長率 |
---|---|---|---|---|---|---|
Q1 | 10,958 | 420 | 8.3% | 4.1% | +5.2% | +3.6% |
Q2 | 11,226 | 470 | 8.4% | 4.2% | +4.7% | +6.1% |
Q3 | 11,378 | 487 | 8.6% | 4.4% | +4.5% | +5.9% |
Q4 | 11,330 | 515 | 8.8% | 4.6% | +4.9% | +6.3% |
11. 財務情報総覧(過去1年間平均)
指標 | 値 |
---|---|
平均売上高 | 11,223億円 |
平均純利益 | 473億円 |
ROE | 8.5% |
ROA | 4.3% |
売上成長率 | +4.8% |
純利益成長率 | +5.5% |
12. 連結貸借対照表(2023年末時点)
項目 | 金額(億円) |
---|---|
総資産 | 57,902 |
総負債 | 33,604 |
純資産 | 24,298 |
自己資本比率 | 42.0% |
13. 連結損益計算書(2019〜2023年度)
年度 | 売上高(億円) | 営業利益(億円) | 純利益(億円) |
---|---|---|---|
2019年 | 21,685 | 1,483 | 1,024 |
2020年 | 22,367 | 1,574 | 1,106 |
2021年 | 23,380 | 2,020 | 1,234 |
2022年 | 42,822 | 2,715 | 1,685 |
2023年 | 44,892 | 3,060 | 1,892 |
14. 財務健全性評価
年度 | 自己資本比率 | 現金等保有額(億円) | 配当性向 | 信用格付け(R&I) |
---|---|---|---|---|
2019年 | 36.7% | 3,129 | 28% | A+ |
2020年 | 38.2% | 3,456 | 30% | AA- |
2021年 | 39.6% | 4,220 | 32% | AA- |
2022年 | 40.8% | 4,576 | 34% | AA |
2023年 | 42.0% | 4,891 | 35% | AA |
15. 投資分析ポイント
NTTデータグループは、国内最大級のITサービス企業として、公共・金融・法人領域での安定した収益基盤を持ちながら、グローバル展開と先端技術の導入にも注力しています。以下に投資の観点からのポイントを整理します。
市場競争力:
成長可能性:
- DX(デジタルトランスフォーメーション)需要の増加による案件拡大
- クラウド、AI、IoT、5Gなど先端技術への対応力強化
- 海外売上比率の向上とグローバル人材の活用による成長期待
財務安定性:
- 売上高4兆円超、営業利益3,000億円規模の安定経営
- 自己資本比率42%、配当性向35%と株主還元にも積極的
- 投資余力を確保した上での成長戦略展開
ESG観点:
- カーボンニュートラル対応、グリーンIT化に向けた施策
- 情報セキュリティ強化、サステナブルなサプライチェーン管理
- 多様性推進(D&I)、働き方改革、人的資本経営
リスク要因:
- 大規模プロジェクトの納期・品質リスク
- 人材確保と高度IT人材の定着課題
- 海外の政治・経済情勢や為替変動の影響
16. 投資戦略提案
短期投資:
- 決算発表、公共事業の受注動向、為替の影響を注視
- 為替が円安に振れると海外売上にポジティブ
中期投資:
- 海外展開の進捗と現地人材戦略の成果に注目
- クラウド/AI関連の収益拡大とシェア獲得
長期投資:
17. 結論
NTTデータグループは、国内外の公共・民間市場で高い信頼を得ているシステムインテグレーターであり、DX・AI・クラウドといった成長領域における戦略的取り組みによって、持続可能な成長が見込まれます。中長期的に安定したリターンを期待できる優良IT企業として、分散ポートフォリオの中