1. 企業概要
- 設立年: 1934年(富士写真フイルム株式会社として設立)
- 本社所在地: 東京都港区赤坂
- 業界: 総合化学、精密機器、医療・ライフサイエンス、印刷・イメージング
- 主要サービス: 医療機器、医薬品、化粧品、デジタルカメラ、印刷材料、ディスプレイ材料など
- 市場シェア: 医療IT・X線画像診断装置、内視鏡、業務用プリントなど複数分野で国内トップクラス
- 主要顧客: 医療機関、研究機関、製造業、小売業、一般消費者
- 上場: 東京証券取引所プライム市場(証券コード: 4901)
2. ミッション & ビジョン
- ミッション: "価値ある商品とサービスを通じて社会に貢献する"
- ビジョン: "持続可能な社会の実現に向けた、イノベーション企業"
- コアバリュー: 顧客中心、技術革新、品質志向、誠実性、環境調和
3. 会社沿革
- 1934年: 富士写真フイルム株式会社 設立(旧大日本セルロイドより分離)
- 1962年: 米国ゼロックス社と富士ゼロックスを設立(2001年持株比率100%に)
- 2006年: 富士フイルムホールディングス株式会社に移行
- 2018年: 医療機器会社和光純薬を子会社化
- 2021年: 富士ゼロックスを完全統合し「富士フイルムビジネスイノベーション」へ
4. 経営陣および従業員情報
- 代表取締役社長・CEO: 後藤 禎一(ごとう ていいち)
- グループ従業員数: 約70,000人(2023年時点)
- 研究開発拠点: 日本(神奈川・東京)、米国、ヨーロッパ、アジア各地
5. ビジネスセグメント
- ヘルスケア: 医療IT、内視鏡、X線診断装置、再生医療、バイオ医薬品CDMO
- マテリアル: フィルム材料、ディスプレイ材料、インクジェット、機能性材料
- イメージング: デジタルカメラ(instax、Xシリーズ)、フォトプリントサービス
- ビジネスイノベーション: 複合機、クラウド文書管理、業務ソリューション(旧富士ゼロックス)
- ライフサイエンス: 化粧品、健康食品、細胞培養技術など
6. 競争環境分析
- 主要競合: キヤノン、オリンパス、GEヘルスケア、コニカミノルタ、リコー、アグファ
- 競争優位性:
- 課題:
- 映像機器の市場縮小と競合激化
- 海外医療市場におけるシェア拡大の難易度
- 研究開発コストの増加と投資対効果の最適化
7. 技術およびイノベーション戦略
注力分野:
- 再生医療、バイオ医薬品、細胞治療技術の商用化支援
- 医療IT・画像診断技術の高度化とAI連携
- デジタル印刷や高性能フィルムの高機能化
研究開発方向:
- 有機材料・高分子設計、ナノテクノロジー
- データサイエンスとの融合による診断・予防・治療の統合モデル
- 環境配慮型製品の開発とカーボンニュートラルへの対応
8. リスク分析
- 国際政治リスク: 米中対立や貿易摩擦の影響による供給網不安
- 為替変動リスク: 円安・円高による収益への影響
- 規制リスク: 医療・化粧品・バイオ分野における法規制変更
- 技術革新リスク: 高速な市場変化への技術対応・陳腐化リスク
9. 昨年の実績(2023年度)
- 売上高: 2兆9,264億円(前年比 +2.6%)
- 営業利益: 2,509億円(前年比 +4.3%)
- 純利益(親会社株主帰属): 1,970億円(前年比 +5.1%)
- 営業利益率: 8.6%
- 純利益率: 6.7%
- 主な成果:
10. 主要財務指標(四半期別・2023年度)
四半期 | 売上高(億円) | 純利益(億円) | ROE | ROA | 売上成長率 | 純利益成長率 |
---|---|---|---|---|---|---|
Q1 | 7,100 | 470 | 7.5% | 4.5% | +2.3% | +4.8% |
Q2 | 7,320 | 510 | 7.6% | 4.6% | +2.6% | +5.0% |
Q3 | 7,410 | 500 | 7.7% | 4.7% | +2.7% | +4.7% |
Q4 | 7,434 | 490 | 7.8% | 4.7% | +2.8% | +5.1% |
11. 財務情報総覧(過去1年間平均)
指標 | 値 |
---|---|
平均売上高 | 7,316億円 |
平均純利益 | 492億円 |
ROE | 7.65% |
ROA | 4.63% |
売上成長率 | +2.6% |
純利益成長率 | +5.0% |
12. 連結貸借対照表(2023年末時点)
項目 | 金額(億円) |
---|---|
総資産 | 5兆7,300億円 |
総負債 | 2兆4,000億円 |
純資産 | 3兆3,300億円 |
自己資本比率 | 58.1% |
13. 連結損益計算書(2019〜2023年度)
年度 | 売上高(億円) | 営業利益(億円) | 純利益(億円) |
---|---|---|---|
2019年 | 2兆4,152 | 2,074 | 1,388 |
2020年 | 2兆1,999 | 1,962 | 1,265 |
2021年 | 2兆4,243 | 2,406 | 1,815 |
2022年 | 2兆8,534 | 2,404 | 1,875 |
2023年 | 2兆9,264 | 2,509 | 1,970 |
14. 財務健全性評価
年度 | 自己資本比率 | 現金等保有額(億円) | 配当性向 | 信用格付け(R&I) |
---|---|---|---|---|
2019年 | 52.3% | 5,800 | 26.1% | A+ |
2020年 | 54.6% | 6,200 | 28.0% | AA- |
2021年 | 56.1% | 6,700 | 30.2% | AA- |
2022年 | 57.5% | 6,900 | 31.5% | AA |
2023年 | 58.1% | 7,100 | 32.0% | AA |
15. 投資分析ポイント
富士フイルムホールディングスは、写真フィルム事業の衰退を機に大胆な事業転換を行い、現在ではヘルスケア、マテリアル、ビジネスイノベーションなど多岐にわたる分野でグローバルに展開している。
市場競争力:
成長可能性:
- バイオ医薬品製造(CDMO)や再生医療は中長期の成長ドライバー
- 環境対応型製品やカーボンニュートラル戦略を通じたサステナブル事業の拡大
- 医療・健康分野における高齢化社会のニーズに対応
財務安定性:
ESG・イノベーション:
リスク要因:
- 医療・製薬規制の変更リスクと承認遅延
- 為替変動による業績影響(特に米ドル・ユーロ)
- 研究開発投資に対する回収期間の長期化
16. 投資戦略提案
短期投資戦略:
- 安定した業績推移を背景に、配当利回りと株価の反発タイミングを重視
- 円安局面では為替メリットによる収益押し上げ効果に注目
中期投資戦略:
- ヘルスケア事業とバイオCDMOの成長を注視し、セグメント別の利益率改善を評価
- ビジネスイノベーション分野の利益貢献度増加にも着目
長期投資戦略:
- 環境、医療、イメージングの融合による新たな市場創出力に期待
- 持続的成長と中期経営計画の進捗モニタリングにより、長期保有に適した銘柄
ESG投資戦略:
17. 結論
富士フイルムホールディングスは、伝統的な映像企業から革新的なライフサイエンス企業への進化を遂げ、安定した財務体質と多角的な収益構造を有している。中長期の社会的課題に対応するビジネスモデルを確立し、成長と社会貢献を両立する企業として、投資対象としての魅力は極めて高い。