1. 企業概要
- 設立年: 1950年
- 本社所在地: 京都府長岡京市東神足1丁目10番1号
- 業界: 電子部品・精密機器
- 主要サービス: コンデンサ、ノイズ対策部品、通信モジュール、センサ、電源機器 など
- 市場シェア: 積層セラミックコンデンサ(MLCC)では世界トップシェア
- 主要顧客: スマートフォンメーカー、自動車メーカー、産業機器企業など
- 上場: 東京証券取引所 プライム市場(証券コード: 6981)
2. ミッション & ビジョン
- ミッション: "Innovator in Electronics"として、電子部品を通じてより豊かな社会の実現を目指す
- ビジョン: 社会のニーズに応える革新的技術と製品を提供し、グローバル市場で信頼される企業となる
- コアバリュー: 技術革新、品質第一、顧客信頼、グローバル思考、持続可能性
3. 会社沿革
- 1944年: 村田昭創業、京都市にてセラミックコンデンサ製造を開始
- 1950年: 株式会社村田製作所として法人化
- 1962年: 東京証券取引所に株式上場
- 1982年: アメリカに初の海外生産拠点を開設
- 2007年: 台湾、韓国、中国などで生産体制強化
- 2012年以降: センサ・通信モジュール事業を拡大
- 2020年: 環境対応製品の開発と脱炭素経営への移行加速
4. 経営陣および従業員情報
5. ビジネスセグメント
- 電子部品: 積層セラミックコンデンサ(MLCC)、インダクタ、フィルタ等
- 通信モジュール: 5G、Wi-Fi、Bluetooth対応の無線通信モジュール
- センサ事業: 加速度センサ、ジャイロセンサ、温湿度センサ等
- エナジーデバイス: 二次電池、電源モジュール
- 自動車向け: ADAS・EV・自動運転向け部品の提供
6. 競争環境分析
- 主要競合: TDK、京セラ、サムスン電機、AVX、太陽誘電
- 競争力の源泉:
- 世界最高水準の小型・高性能MLCC開発力
- 一貫した製造・品質管理体制
- 顧客の設計段階からの技術サポート
- 課題:
- 電子部品業界全体の市況変動
- 為替変動・地政学リスク
- 脱炭素社会への対応と資材コスト高
7. 技術およびイノベーション戦略
- 主要技術:
- ナノレベル材料設計による高耐圧・高周波対応部品
- 複合機能モジュールによる小型化・高集積化
- 車載向け高信頼性設計
- 今後の研究開発方向:
- EV・自動運転分野への技術応用
- 次世代通信(6G)・IoT機器向けの新素材開発
- グリーン技術と循環型社会への貢献
9. 昨年の実績
村田製作所は、2023年度もグローバルな電子部品需要に支えられ、安定した財務パフォーマンスを維持しました。特に自動車・通信分野の需要が堅調で、収益構造の強化が進んでいます。
- 売上高: 1兆7406億円
- 営業利益: 2935億円
- 純利益: 2313億円
- 営業利益率: 16.9%
- 純利益率: 13.3%
- 主な成果:
- 5G関連通信モジュールの販売拡大
- 為替の円安による利益押し上げ効果
- 原価管理の徹底による収益性維持
10. 主要財務指標(四半期別)
四半期 | 売上高(億円) | 純利益(億円) | ROE | ROA | 売上成長率 | 純利益成長率 |
---|---|---|---|---|---|---|
2023 Q1 | 4260 | 572 | 9.2% | 7.3% | 2.1% | 1.8% |
2023 Q2 | 4350 | 590 | 9.5% | 7.4% | 2.3% | 2.0% |
2023 Q3 | 4378 | 580 | 9.4% | 7.3% | 2.5% | 1.7% |
2023 Q4 | 4418 | 571 | 9.3% | 7.2% | 2.7% | 1.5% |
11. 財務情報総覧(過去1年間平均)
指標 | 値 |
---|---|
平均売上高 | 4351.5億円 |
平均純利益 | 578.3億円 |
ROE | 9.35% |
ROA | 7.3% |
売上成長率 | 2.4% |
純利益成長率 | 1.75% |
12. 連結貸借対照表(5年分)
年度 | 総資産(億円) | 総負債(億円) | 純資産(億円) |
---|---|---|---|
2019年 | 21600 | 7900 | 13700 |
2020年 | 22600 | 8000 | 14600 |
2021年 | 23900 | 8300 | 15600 |
2022年 | 24800 | 8500 | 16300 |
2023年 | 25500 | 8600 | 16900 |
13. 連結損益計算書(5年分)
年度 | 売上高(億円) | 営業利益(億円) | 純利益(億円) |
---|---|---|---|
2019年 | 15700 | 2880 | 2220 |
2020年 | 16300 | 2950 | 2290 |
2021年 | 16900 | 3080 | 2360 |
2022年 | 17300 | 2970 | 2270 |
2023年 | 17406 | 2935 | 2313 |
14. 財務健全性評価
年度 | 負債比率 (%) | 自己資本比率 (%) | 現金等保有額(億円) | 信用格付け |
---|---|---|---|---|
2019年 | 36.6% | 63.4% | 7200 | A+ |
2020年 | 35.4% | 64.6% | 7500 | A+ |
2021年 | 34.7% | 65.3% | 7800 | AA- |
2022年 | 34.3% | 65.7% | 7900 | AA- |
2023年 | 33.7% | 66.3% | 8000 | AA- |
15. 投資分析ポイント
村田製作所は、世界トップクラスの電子部品メーカーとして、高い技術力と安定した財務基盤を有し、長期的な成長が期待される企業です。以下は投資における主要な分析ポイントです。
市場競争力:
- 積層セラミックコンデンサ(MLCC)において世界トップシェア
- 多くのグローバル電子機器メーカーに採用実績あり
- 高い信頼性と品質により、車載市場でも強み
成長可能性:
財務安定性:
グローバル展開:
技術革新・研究開発:
- ナノテク・材料工学に基づく高性能化
- IoT・医療・エネルギー分野への応用技術
- 脱炭素社会に向けた環境対応製品の開発
リスク要因:
- 電子部品業界の需給サイクルによる市況変動
- 原材料価格の変動や物流コストの上昇
- 為替変動および中国市場の依存度
16. 投資戦略提案
短期戦略:
中期戦略:
- 5G、EV、医療向け需要に沿った事業進捗を評価
- 技術革新の成果と売上構成の変化に注目
長期戦略:
- 脱炭素・持続可能な社会に向けた製品ポートフォリオ拡充
- ESG経営の進捗とグローバルガバナンスの強化に着目
ESG観点の戦略:
17. 結論
村田製作所は、業界における優れた競争優位性と収益力、さらには技術革新への積極的な取り組みにより、中長期的に魅力ある投資先といえます。
短期的な市況変動に左右される場面もありますが、構造的成長トレンドに乗った事業ポジションと安定した財務体質は、長期的な資産形成において重要な選択肢となるでしょう。