1. 企業概要
- 設立年: 1921年
- 本社所在地: 東京都港区赤坂2丁目3番6号
- 業界: 建設機械、鉱山機械、産業機械
- 主要サービス: 建設機械の製造・販売(油圧ショベル、ブルドーザー、ダンプトラックなど)、鉱山機械、フォークリフト、プレス機械、ICT施工支援サービス
- 市場シェア: 世界第2位の建設機械メーカー(キャタピラーに次ぐ)
- 主要顧客: 建設業界、鉱山業界、産業機械業界
- 上場: 東京証券取引所(証券コード: 6301)
2. ミッション & ビジョン
- ミッション: "Creating value through manufacturing and technology innovation"(ものづくりと技術革新で価値を創造する)
- ビジョン: 持続可能な社会の実現に貢献するため、安全・効率・省エネに優れた機械・サービスを提供
- コアバリュー: 現地密着、品質第一、技術革新、顧客との共創、社会との調和
3. 会社沿革
- 1921年: 小松製作所として石川県小松市で創業
- 1951年: 日本初のブルドーザーを開発
- 1964年: アメリカ市場に進出
- 1980年代: 中国・欧州・アジア市場に本格展開
- 2007年: ICT施工支援システム「KOMTRAX」をグローバル展開
- 2022年: コマツ創業100周年
4. 経営陣および従業員情報
- CEO(代表取締役社長): 小川啓之(Ogawa Hiroyuki)
- 従業員数: 約63,000人(連結、2023年時点)
- 拠点: 日本、アメリカ、ドイツ、中国、インドネシア、オーストラリア、ブラジルなど
5. ビジネスセグメント
- 建設機械・車両部門: 油圧ショベル、ホイールローダー、ダンプトラックなど
- 鉱山機械部門: 超大型ダンプ、電動ショベル、オートメーション鉱山システム
- 産業機械部門: プレス機械、工作機械、温調機器
- ICT・スマートコンストラクション: 自動運転、遠隔操作、デジタル施工支援
- サービス&ソリューション: メンテナンス、予防保守、IoT活用の稼働分析
6. 競争環境分析
- 主要競合: キャタピラー(米)、日立建機、ボルボCE、リープヘル、斗山インフラコア
- 競争優位性:
- 高い耐久性と品質、アフターサービス網の強さ
- ICT施工や鉱山自動化など革新的なソリューション提供
- 環境・安全対応に優れた製品開発力
- 課題:
- 世界的な資源価格変動の影響
- 建設需要の地域偏在と地政学的リスク
- 為替変動・部材調達コストの上昇
7. 技術およびイノベーション戦略
主要技術:
- 自動運転ダンプトラック(AHS)
- 遠隔操作ショベル
- ICT施工管理システム「スマートコンストラクション」
- IoTによる稼働監視(KOMTRAX)
研究開発の方向性:
- カーボンニュートラル対応の電動建機・水素活用
- 建設現場の完全自動化・無人化への取り組み
- デジタルツインやAIによる施工最適化技術
8. リスク分析
- 市場リスク: 建設・鉱山投資の減速、景気後退
- サプライチェーンリスク: 半導体不足、原材料高騰、物流遅延
- 技術リスク: デジタル化・自動化競争における技術遅れ
- 地政学リスク: 国際紛争、貿易摩擦による影響
- 環境規制リスク: 排出ガス規制、脱炭素化への対応強化
9. 昨年の実績(2023年度)
- 売上高: 4兆237億円
- 営業利益: 5,557億円
- 純利益: 3,904億円
- 営業利益率: 約13.8%
- 純利益率: 約9.7%
- 主な成果:
- 建設・鉱山機械の堅調な需要が全体売上を牽引
- 価格改定とコスト改善による利益率の向上
- スマートコンストラクションやICT建機の拡販が成長に貢献
10. 主要財務指標(四半期別・2023年度)
四半期 | 売上高(億円) | 純利益(億円) | ROE | ROA | 売上成長率 | 純利益成長率 |
---|---|---|---|---|---|---|
Q1 | 10,165 | 1,018 | 10.5% | 6.7% | +13.2% | +21.0% |
Q2 | 10,070 | 961 | 10.0% | 6.5% | +8.4% | +15.6% |
Q3 | 9,988 | 980 | 10.2% | 6.6% | +5.9% | +17.3% |
Q4 | 10,014 | 945 | 9.8% | 6.3% | +3.1% | +14.2% |
11. 財務情報総覧(過去1年間平均)
指標 | 値 |
---|---|
平均売上高 | 10,059億円 |
平均純利益 | 976億円 |
ROE | 10.1% |
ROA | 6.5% |
売上成長率 | +7.7% |
純利益成長率 | +17.0% |
12. 連結貸借対照表(2023年3月末時点)
項目 | 金額(億円) |
---|---|
総資産 | 39,152 |
総負債 | 18,721 |
純資産 | 20,431 |
自己資本比率 | 約52.2% |
13. 連結損益計算書(2021〜2023年度)
年度 | 売上高(億円) | 営業利益(億円) | 純利益(億円) |
---|---|---|---|
2021年 | 27,019 | 3,032 | 2,218 |
2022年 | 30,966 | 4,808 | 3,010 |
2023年 | 40,237 | 5,557 | 3,904 |
14. 財務健全性評価
年度 | 負債比率 | 自己資本比率 | 現金等保有額(億円) | 信用格付け(国内) |
---|---|---|---|---|
2021年 | 51.0% | 49.0% | 3,820 | AA- |
2022年 | 48.3% | 51.7% | 4,190 | AA |
2023年 | 47.8% | 52.2% | 4,375 | AA |
15. 投資分析ポイント
Komatsu(コマツ)は、建設機械および鉱山機械分野で世界トップクラスの地位を誇り、堅実な財務基盤とグローバルな販売網を持つ企業である。以下に、投資家視点での分析ポイントを示す。
市場競争力:
- 世界2位の建機メーカーとして、堅固なブランドと信頼性を有する
- ICT施工、スマートコンストラクション分野で先進的な取り組みを展開
- アフターサービスと稼働分析(KOMTRAX)による差別化
成長可能性:
- インフラ整備需要の拡大、資源価格上昇による鉱山機械需要の回復
- 新興国市場の建設需要増加による成長期待
- 自動化・電動化建機の開発による技術的優位性
財務安定性:
グローバル展開:
ESG・技術革新:
- カーボンニュートラル対応建機や水素建機の開発を推進
- 労働安全、環境保護に配慮したスマート施工技術の普及
- 持続可能な調達やエネルギー効率向上への取り組みを強化
リスク要因:
16. 投資戦略提案
短期投資戦略:
- 建設需要の急増・インフラ政策の動向に応じた株価変動を利用
- 円安局面での輸出企業としての恩恵に着目
中期投資戦略:
- 建設業界の自動化・省人化ニーズの高まりに伴う技術優位性を活かす
- 新興国向け建機需要と鉱山機械販売の回復期待
長期投資戦略:
- 自動運転建機・スマート施工による建設業界の未来インフラ構築への貢献
- ESG対応と技術進化により持続的競争優位を確保
- 安定的な配当政策と利益成長による株主価値の向上
ESG投資戦略:
- 環境配慮型建機とゼロエミッションへの取り組みを重視
- ESGレーティングの向上と情報開示強化による持続可能な企業価値創出
17. 結論
コマツは、建設・鉱山機械市場での圧倒的な実績に加え、技術革新・ESG対応・自動化戦略により、次世代の建設業界をけん引するリーディングカンパニーである。中長期的な収益性と財務健全性の両立を背景に、安定成長を志向する投資家にとって魅力的な投資先である。